
■島根では「マイカ」と呼ぶ、ねっとり甘いケンサキイカの季節 島根県浜田市に住む友人とおしゃべり。浜田市には、いい漁港がある。友人が、言っちゃってくれるのである。 「今はマイカね。すぐそこの定置網でとれるんですわ。朝、あがったんがスーパーにもならぶんで、ここんとこ、マイカの刺身ばっか」 ほほう、マイカですか。スルメイカのことね、と軽くあしらうと、友人は、フフンてな顔して「ケンサキイカのこと、こっちじゃマイカって呼ぶんですわ」。 聞いたとたん、私、嫉妬である。ケンサキイカは、イカ類トップクラスの美味。ねっとりした食感と甘み。喉をすべったのちのうまみの余韻に鼻の奥がうずいてきそう。チッチである。お値段というのは正直で、築地にいたって、連日の刺身ざんまいとはいかない高級イカなのである。 島根県は、築地市場へ入荷するケンサキイカの主産地。「マイカ」と呼ぶのも、なるほど、なわけ。マイカという名前は、その土地でいちばんとれるイカのことをいう。 「マイカ」の「マ」。どんな字を当てるのだろう。やっぱり「真」でしょうか。その土地の「まことのイカ」。でも、私には「魔」の字が浮かぶ。魔性のうまさ……。て、意味もあるけど、現場で仕事してたときの、あの「魔」。 入荷するケンサキイカは、氷を敷き詰めた発泡スチロール箱にお行儀よくならんでいる。透明感のある白に雪の結晶みたいな飴色の斑点が浮かび、それはみごと。さあ、売ってくれい、の勢いがある。ところが、ふたをあけると、刻一刻と斑点の輪郭がぼやけ、ついには白さばかりが目立ってくる。それがうらめしい。鮮度に大きな違いはないが、お客さまには、いつも勢いのある姿を見せたい。しかし、時間がそうさせない。 「時の悪魔」の「魔」なのだ。 さて、ここまでケンサキイカと書いてきたが、築地市場では「シロイカ」のほうが通じる。これもまた島根や鳥取など山陰地方の呼び名。イカの名前は、ややこしいのである。 旬事情 小さめのケンサキイカは、香草グリルもよし。フライパンにオリーブ油を温め、ローズマリー1枝で油に香りをつけ、グリル。バジリコやらを散らし、レモンを搾ってどうぞ。 文:福地享子 写真:平野太呂 ※この記事はdancyu2017年9月号に掲載したものです。
魔性のうまさをもつイカとは?「市場旬ばなし」(dancyu) - Yahoo!ニュース - Yahoo!ニュース
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