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Sunday, November 27, 2022

「超ロングテール商品」を強みに 富澤商店4代目のファンづくり戦略 | ツギノジダイ - ツギノジダイ

 富澤商店は1919(大正8)年に創業し、約1200人の従業員(2022年6月現在)を抱えます。小麦粉やバターといった製菓・製パン材料から、調理用具、ラッピングの材料まで約8500点にのぼる豊富な品ぞろえを誇り、製パン用小麦粉だけで約25種類を用意しています。売り上げの85%が個人顧客向けで、年商は約136億円となります。

富澤商店は製菓・製パンなどの材料から調理器具まで、多様な商品アイテムを扱っています(以降の写真はすべて同社提供)

 富澤さんは3代目社長・一郎さんの長男として生まれました。「会社と家が近かったせいか、子どものころから自然と家業を意識していました。2代目社長の祖父(正さん)にはかわいがられ、将来自分が継ぐのかなとぼんやり感じていました」

 米国の大学に進学し、2000年の卒業後は家族の知り合いがいた米国の投資会社兼ホテル運営企業に入社し、取締役も務めます。それは経営ノウハウを学ぶための期間でもありました。

 米国では特に巨大物流システムに刺激を受けたといいます。「大きなトラックを走らせる道路や、その荷物を収納する倉庫などが完備され、商品を効率的に回すための基盤が整っていました。当時は米国の物価も安く、労働者もしっかりした会社で働けばいい家に住める。そんな生産性の重要さを感じました」

 将来家業を継ぐことを見据え、「会社を長く続けられるのかという焦りが強かった。目が血走りながら米国で学びました」と振り返ります。

かつての富澤商店

 29歳だった06年に帰国し富澤商店に入社すると、実質的なトップとして経営にあたりました。

 「食品業界は平均年齢が高く60歳でも若く見られます。同業者のパーティーでは年齢でさばを読んでいた時期もありました(笑)」

 入社して取り組んだのは商品の仕入れ業務です。当時の取引先400社のうち約80社を担当。発注や品切れの対応と並行し、商品開発なども進めていました。

 「商品の内容や必要となる表示を必死に覚えました。食品では安全性が何より大事。これを怠ってはなりませんでした」

 富澤さんは当時、製造や在庫管理について課題を感じていました。たとえば倉庫は人手が足りず、営業社員に手伝ってもらう状態だったといいます。倉庫の数も足りず、商品が一番売れるはずの秋に欠品が続き、チャンスを逃していました。

 富澤さんは「なけなしのお金を投資して、仕入れのネットワークシステムを整えました。取り扱っていない商品も登録されて収拾がつかなくなっていたので、毎日自分で全部(データを)消して、3万アイテムくらい消去しました」

相模原市に建設した大規模な工場・物流センター

 富澤さんは09年8月、社長に就任。同じころ、相模原市に工場・物流センターを作りました。敷地面積は約6100平方メートルを誇ります。

 「グーグルマップで毎日空き地を検索して不動産屋に電話をかけまくり、大きな倉庫を見つけました。大規模な初期投資を必要としましたが、社の発展のためには必然の選択でした」

 製造と物流のデジタル化も進めました。「以前は在庫数を目視で確認するような原始的な状態でした。訓練してスタッフの精度は上がっていたのですが、やはりミスは避けられません」

 そこで富澤商店ではクラウドソフトを導入し、流通の過程や在庫数、出荷予測や適正在庫まで一元化。商品を梱包して段ボールに入れる作業は人力に頼りながら、アナログとデジタルの良さをミックスし、勘で作業をするようなことを排除しました。

 「作業がマニュアル化されたので仕事も覚えやすくなり、ミスも減るので従業員の心理的な負担も少なくなりました」。今後の人員採用にもプラスになると考えています。

 社長就任と時期を前後し、富澤商店は出店を拡大します。07年3月の東海エリアへの出店を皮切りに全国各地へと広げ、就任時の13店舗から現在では91店舗になりました。

 出店戦略で意識したのは同社の哲学でもある「適正な商い」でした。

 「当時、東京都内の駅前でケーキが260円ほどで売られているのを目にしました。でも、多少高くても良い買い物をしたと思っていただける食品を作ることが大事だと思いました。安さで勝負すると必然的に商品の質を落とさざるを得ず、人件費も削らなければならないからです」

富澤商店は百貨店に次々と出店していきました。写真は高島屋玉川店の店舗

 富澤さんは特に百貨店への出店を加速させました。

 「京都駅前の百貨店をアポ無しで訪れ、食品フロアで担当者っぽい人を見つけて名刺を出して、部長に会わせてほしいと言いました。そこでお店を開いたことで関西圏の百貨店に広がりました」 

 「伝統を重んじる京都は、新参者だと企業も一般のお客様もなかなか商品を買ってくれない傾向があります。食品業界はまず胃袋をつかむことが肝要です。繰り返し訪問し、試食販売などで富澤商店の味に触れていただくことで、少しずつ受け入れられるようになりました」

 店舗数の増加と同時にECサイトにも力を入れました。17年には同業のクオカプランニングを傘下に収め、18年には業務用卸専門ECサイトを立ち上げました。

 ECではスピード感を意識しています。「東京や神奈川などからの注文であれば当日か翌日に届く体制を確立しました。ECで扱う商品の種類も拡大しています。ロングテールの商品群とイーコマースとの相性の良さを感じています」

 21年末からは、ツイッターやインスタグラムなどのSNSから生まれるUGC(ユーザー生成コンテンツ)に力を入れ始めています。影響力のある料理好きのユーザーに焦点を当てたインフルエンサーマーケティングを活性化。約400人のアンバサダー組織を作り、数万人のフォロワーを持つインフルエンサーから、熱量の高い富澤商店のファンまで、幅広く抱えています。

 「#富澤商店ファミリー」などというハッシュタグを付け、富澤商店の食材で作ったスイーツの写真を投稿してもらうことでファンを増やしました。

 同社の公式アカウントでは、ユーザーの写真投稿を拡散したり、投稿に返信を送ったりして、ユーザーとのネットワークづくりを意識しました。

華やかなお菓子の写真が並ぶ富澤商店の公式SNS

 21年12月から半年でツイッターで約10万、インスタグラムで約4万フォロワーを増やしました。ECサイトの会員数もコロナ禍前の35万人(20年2月)から、60万人(22年6月)へと急成長しています。

 22年夏からはソーシャルメディアマーケティング支援会社と連携し、特許を取得したAI技術でSNSの投稿を解析しながら、インフルエンサーのオンライン販売力を測ったり、ブランド(商品)との親和性の高いユーザーをSNSから発掘したりするプラットフォームを構築し始めました。

 「お客様とスタッフ、またはお客様同士の交流を目指し、商品だけでなく、パンやお菓子作りに必要な知識や楽しさを知ってもらえるようになればと思います。今はSNSから直接情報を取ったり、インフルエンサーの勧めで買ったりする人が増えています。商材が特殊なので、お客様がお客様を引っ張ってくる形を目指したいです」

ビジュアルを意識した富澤商店のインスタグラム

 20年8月期のECサイトの売上高はコロナ禍の巣ごもり需要で急増し、前期比24%増の34億5千万円にのぼりました。翌年度はいったん落ち着いたものの、22年8月期は35億円に至りました。実店舗における売り上げが減少した分を、EC販売の躍進で補った形です。

 ソーシャルマーケティングの一方、顧客との「触れあい」にも力を入れており、お菓子・パン作りを教える「TOMIZ×cuoca STUDIO」、店舗併設のレンタルキッチンスペース「TOMIZAWA SHOUTEN COMMUNITY SPACE」を運営しています。

レンタルキッチンスペース「TOMIZAWA SHOUTEN COMMUNITY SPACE」

 キッチンスペースでは、店頭で購入した食材を持ち込んで調理できるのが特徴です。

 富澤さんは「富澤商店の商品は初めて触れる方にとってはややハードルが高いのではないか」という問題意識を持っていました。

 「小麦粉などの原料は、具体的にどうやって使うかとなると少し難しいですよね。レッスンやレンタルスペースなどを通して、食べ物に一人ひとりの色を出してほしいという思いがありました。今はコロナ禍で少し活動が制限されている面はありますが、今後はさらに展開できればと思います」

 富澤商店は海外戦略も重視し、現在はシンガポールや香港、台湾などを中心に輸出を進めています。今後、東南アジアで製菓・製パンの材料を扱うtoB企業のM&Aを進める計画もあります。「現在、輸出の割合は3%ほどですが、今後さらに伸ばしていきたい」

新しくなった富澤商店のロゴ

 22年6月には、創業から町田本店で使用している屋号紋「∧(やま)」と「ト」を組み合わせた新しいロゴを作りました。富澤さんは「新しいロゴを、海外でも定着させたい」と決意を語ります。

 富澤商店は「超ロングテールの商品」(富澤さん)をこれからも強みにする方針です。「スーパーでは手に入りにくいロングテールの商品をフレッシュな状態でお客様に届けたい」

 富澤さんが4代目社長になって12年。これから描こうとしている成長曲線とはどのようなものでしょうか。

 「投資家目線で言えば、売り上げがずっと横ばいだとつまらない会社とみられます。ブランディングやマーケティングを進め、コモディティーな商品を粗利を稼げるビジネスにして企業価値を高めたいです」

 「今は外で食事を手軽に買えて共稼ぎも増えたので、平日夜に料理を作れない方も多くなっています。その分、週末に料理を楽しむという需要を捉え、海外にも広げていきたい。料理を作る楽しさをみなさんに味わってほしいというのが、私が目指すところです」

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