【シドニー】コモディティー(商品)価格の上昇が、新型コロナウイルス禍からの世界経済の回復に欠かせない金属を供給する資源国に思いがけない経済的利益をもたらしている。
鉄鉱石と銅価格は今週、いずれも過去最高値を更新。世界各国による巨額の景気刺激策が金属需要を押し上げているためだ。オーストラリアやチリなどの輸出国は、世界経済が金融危機を克服しつつあった10年余り前にも、中国をはじめとする大型インフラ投資の恩恵を受けてきた経緯があり、まさに「歴史は繰り返す」展開となっている。
商品ブームは資源国の税収を押し上げており、コロナで必要となった医療サービスや経済支援の原資に振り向けることが可能だ。借り入れを減らすことで、将来の経済的な衝撃を吸収する体力も強まる。またコモディティーの値上がりは、輸出国の株式市場をけん引。英豪系資源大手BHPやリオ・ティントといった資源大手の収益を押し上げ、株主への増配につながる。
米国やロシア、中東諸国など産油国も、同じように資源ブームの追い風を受ける。原油価格は最高値圏にはないが、ワクチン接種の進展や旅行制限の緩和を背景とする需要回復への期待から、足元では上昇基調にある。原油の国際指標である北海ブレント先物は、年初来およそ3割値上がりしている。
だが、商品ブームの恩恵が持続すると見込んで短期的に歳出を増やした資源国は、価格が下落に転じた際に悪影響を受けやすくなる。資源高はまた、世界的なインフレ加速を誘発しかねない。政策担当者はバブルを回避するため、景気回復がなおぜい弱にもかかわらず、利上げなどで介入を余儀なくされるかもしれない。
コモディティー価格の値上がりは、石油・ガスや金属の輸入国にとっては足かせとなる。輸出国でさえ、資源高が経済回復の起爆剤となるとは限らない。例えば、ブラジルは鉄鉱石の主要輸出国であるにもかかわらず、コロナ感染の急増で景気が停滞している。
対照的に、世界の鉄鉱石輸出の半分以上を占めるオーストラリアは、資源高の恩恵で経済環境が好転した典型例だ。11日に公表された2021/22年度(2021年7月~2022年6月)予算案では、財政赤字が1610億豪ドル(約13兆7000億円)になるとの見通しを示し、半年前の約2000億豪ドルから大幅に赤字予想を縮小した。
ただ、オーストラリアの財政改善は、国内のコロナ封じ込めと賃金補償など景気刺激策の経済効果によるところが大きい。同国ではコロナ発生以降の累計感染者数が3万人未満にとどまる。だが、鉄鉱石価格の高騰も大きな要因であることは間違いない。鉄鉱石価格は12日、1トン=233.10ドルと、過去最高値を更新した。
ジョシュ・フライデンバーグ豪財務相は「鉄鉱石価格は当初予想をはるかに上回る水準にある」と述べる。
オーストラリアの予算案は、鉄鉱石価格がトン当たり55ドルに戻るとの予想を前提としている。UBSグループのエコノミスト、ジョージ・サレノー氏は、仮に価格が230ドルにとどまれば、オーストラリアには155億ドル(約1兆7000億円)の追加収入が舞い込むことになると試算している。そうなれば、コロナ対策として国境封鎖が長引いても、観光や留学サービスといった産業の落ち込みやワクチン接種の遅れによる影響を緩和できそうだ。
こうした中、オーストラリア準備銀行(中央銀行)は先週、2021年(暦年)の成長率見通しを2月時点の3.5%から4.75%に上方修正した。
オーストラリアにとって、鉄鉱石価格の高騰は、貿易を巡る中国からの圧力を軽減するという点でも朗報だ。中国のコロナの初期対応を巡り、スコット・モリソン豪首相が国際調査の実施を要求して以降、中国は大麦や牛肉など一連の豪輸出品に輸入制限や追加関税を課している。だが、鉄鉱石に関しては、オーストラリアに大きく依存していることから、中国当局の標的にはなっていない。
コモンウェルス銀行(CBA)のチーフエコノミスト、スティーブン・ハルマリック氏は「世界最大の買い手が世界最大の売り手から鉄鉱石を買っている」と指摘。「中国が要求する質と量をかねそなえた鉄鉱石を提供できるのは他に誰もいない」と話す。
世界銀行は、金属価格が今年3割近く値上がりし、景気刺激策の影響が薄れ供給の制約が解消されるであろう来年には下落すると予想している。ただ、2兆3000億ドルの米インフラ投資計画がアルミニウムや銅、鉄鉱石など金属価格をさらに押し上げる可能性があり、大型刺激策の動向に大きく左右されると指摘している。
銅輸出国のチリも経済が回復している。国際通貨基金(IMF)では同国の今年の成長率を6.2%と予想しており、他の中米諸国の平均を上回るペースだ。銅価格は過去1年に倍以上に値上がりしており、11日のニューヨーク商品取引所(COMEX)では1ポンド=4.7785ドルの最高値をつけた。
半面、鉄鉱石輸出で世界第2位のブラジルでは、経済活動が停滞している。コロナ感染が再び深刻化しており、州や自治体が制限措置の再導入を迫られたためだ。
ブラジル中央銀行は先週、インフレ抑制に向けて利上げに踏み切った。景気が低迷するにもかかわらず、中銀は6月の次回会合での追加利上げを示唆している。
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商品ブームで資源国に追い風、10年前の記憶再び - Wall Street Journal
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